17年間にわたり5,000人を対象にした健康調査、「中之条研究」でわかった健康と長寿の黄金律

「1日8000 歩・20分の速歩き」があらゆる病気を遠ざける

青栁 幸利

2. ハードな筋トレをしなくても「速歩き」で脚の老化は防ぐことができる

では、年をとっても筋力を維持し動ける体でいるにはどの程度の運動が必要なのか。それを述べる前に、まず運動強度について説明しておきます。

運動強度を示す指標に、メッツ(METs)があります。メッツは消費カロリーを表し、何もしなくても消費されるカロリー(安静時代謝)を1メッツとし、その2倍のカロリーを消費する活動を2メッツのように表し、一般的な運動強度は以下のように分類されます。

・低強度 1~3メッツ未満
 簡単な家事、ゆっくりとした散歩など
・中強度 3~6メッツ未満
 速歩き、犬の散歩、山歩きなど
・高強度 6メッツ以上
 ジョギング、駆け足、ジャンプなど

たとえば「簡単な家事」でも、なぜ「1~3メッツ未満」のように幅があるかというと、同じ運動でも年齢や体力などによってエネルギー消費には個人差があるからです。

ある程度の筋肉量を維持し、歩行能力の低下を防ぐには、中強度の3メッツ以上の運動が必要だと考えられています。

3メッツ以上の運動でもっとも手軽なものは、「速歩き」で、筋力トレーニングやジョギングなど特別な運動をしなくても、速歩きで脚の老化は防ぐことができるのです。

ただし、いま言ったように、年齢や体力などによってエネルギー消費には個人差があります。運動の強度を説明する時、研究者によっては「汗ばむ程度」とか「ややきついと感じる程度」などと説明しますが、これは季節や個人によってまちまちなので、一般的な目安にはなりません。

そこで私はウオーキングならば、「歌は歌えないけれども、なんとか人と会話ができる程度」と説明することにしています。

じつは、この中強度の運動を継続すると、歩行能力が維持できるだけでなく、老化やさまざまな病気の予防にも効果があるということが、2000年から私が行ってきた中之条研究において明らかになってきたのです。


※本コンテンツはCOCORO 16号をもとに再構成しています

青栁 幸利 (あおやぎ ゆきとし)
東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム副部長、運動科学研究室長。医学博士。1962年、群馬県中之条町生まれ。筑波大学卒業、トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。群馬県中之条町の六十五歳以上の住民5,000人を対象に、17年間にわたり、身体活動と病気予防の関係についての調査(中之条研究)を実施。中之条研究の成果を踏まえ、「一日平均8,000歩・一日平均中強度活動20分」を提唱。万病を防ぐ新常識の健康法として、テレビなどで話題となった。主な著書に『やってはいけないウォーキング』『あらゆる病気は歩くだけで治る!』『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(すべてSBクリエイティブ)など数十冊がある。