17年間にわたり5,000人を対象にした健康調査、「中之条研究」でわかった健康と長寿の黄金律

「1日8000 歩・20分の速歩き」があらゆる病気を遠ざける

青栁 幸利

1. 長距離型の筋肉を使っているだけでは筋力は加齢とともに弱っていく

お年寄りが横断歩道を青信号のうちに渡りきることができない――そんな光景を目にしたことがあると思います。

じっさい私たちが行った高齢者の歩行速度の調査では、80歳以上の高齢者は、道幅に関係なく横断歩道を青信号に変わった時点でスタートしても渡りきる前に赤信号になってしまうという計算結果が出ました。ちなみに標準的な青信号の時間は1秒間に1メートル進むことを基準に設定されています。

老化は脚から始まるといわれますが、たしかに加齢とともに歩く速さは遅くなっていきます。それはなぜかというと、筋力の衰えとともに歩き方も変化するからです。

年をとると背中が曲がり、上体が前かがみになります。こうした姿勢の変化とともに、膝関節が曲がっていきます。このように猫背で膝が曲がると、歩幅を大きくとることができず、自然と歩幅の小さい歩き方になるのです。

こうした歩行能力の低下は、いろいろな原因が複合的にからんで生じますが、中でももっとも大きな原因は、加齢とともに身体を動かさなくなることによる筋力の低下です。

人間の筋肉はその特性によって、大きく三つに分けることができます。一つは長距離型の筋肉で、収縮が遅く小さな力しか出ませんが、持久力がある。もう一つは短距離型の筋肉で、収縮が速くて大きな力が出るものの疲れやすい。三つ目はその中間型で、比較的力もあり疲れにくい筋肉です。

私たちは、この筋肉を上手に使い分けて生活しています。たとえば起立や姿勢保持、ゆっくりとした歩行などでは、絶えず長距離型が使われています。走ったり、力仕事をするなど運動強度が増すごとに中距離型の筋肉から短距離型の筋肉へと、使われる筋肉が順次加わっていきます。

加齢とともに活動量が減少しても、長距離型は使われますが、徐々に短距離型や中距離型は使われなくなっていきます。使われなくなった筋肉は当然細くなり、場合によっては消えてなくなってしまいます。

太ももはもっとも筋肉量が多いとされていますが、約50万本の筋線維があるといわれる太ももの外側の筋肉(外側広筋)は加齢とともに細くなり、80歳以上になると筋線維は半分になってしまうといわれます。筋肉が半分に減るということは、筋力が半分になることを意味します。

ですから年をとっても筋力を維持するためには、長距離型の筋肉しか使わないような活動ではなく、短距離型や中距離型の筋肉も使うような生活をすることが大切なのです。


※本コンテンツはCOCORO 16号をもとに再構成しています


青栁 幸利 (あおやぎ ゆきとし)
東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム副部長、運動科学研究室長。医学博士。1962年、群馬県中之条町生まれ。筑波大学卒業、トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。群馬県中之条町の六十五歳以上の住民5,000人を対象に、17年間にわたり、身体活動と病気予防の関係についての調査(中之条研究)を実施。中之条研究の成果を踏まえ、「一日平均8,000歩・一日平均中強度活動20分」を提唱。万病を防ぐ新常識の健康法として、テレビなどで話題となった。主な著書に『やってはいけないウォーキング』『あらゆる病気は歩くだけで治る!』『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(すべてSBクリエイティブ)など数十冊がある。