誰もが高齢者になる時代は、 介護との向き合い方を見つめ直す時代

飯野三紀子

人生100年時代は、誰もが高齢者になる時代。高齢になれば介護を必要とする人も、介護をする人も増える。いわば人生100年時代は、誰もが介護と関わらなければならない時代だ。自らも介護経験を持ち、ケアライフコンサルタントとして相談者に介護に対するアドバイスを続ける飯野三紀子さんに、これからの介護について話していただいた。

3. 介護との向き合い方を変えて、介護を学びのチャンスに

「介護」という言葉を聞いて、「長男・長女が仕方なくやること」「やりたくはないが避けて通れないこと」という「介護=やらされ感満載」のイメージを持っている人は少なくありません。
実際、日頃からケアライフコンサルタントとして、介護される人と介護する人、そしてその周囲の人たちから相談を受けていると、「やらされ感」「嫌々」といった言葉で自分をマイナス方向へ追い込んでいる人の多さを実感します。
 
しかし、介護を「嫌々やる仕事」のように考えるのは、もうそろそろやめにしたほうがよいのではないでしょうか。なぜなら介護を「嫌々やる仕事」と考えることは、大事な人生の一定期間をわざわざ味気ない時間にしてしまうからです。
 
アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズは「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる」と言いました。
この言葉にならえば、介護との向き合い方、取り組み方を変えることで、介護を自分の成長や人生を充実させる貴重な経験に変えることができる。私はそう考えています。
 
その一例を挙げましょう。介護には「終わりが見えず、正解もわからない」という性質があります。
そかし、そういう性質を持つ介護に取り組むと、答えの出ない、どうにも対処のしようのない事態に耐える力、いわゆる「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)」を高めることにつながるのではないかと思います。
 
考えてみれば、私たちの人生は正解のない道を手探りで歩んでいくようなもの。介護をとおしてネガティブ・ケイパビリティを高めておけば、これから先、何が起こっても必要以上にうろたえることはなくなるでしょう。
じつは介護には、こうした学びのチャンスがたくさんあるのです。 

飯野三紀子 (いいの・みきこ)
(社)介護離職防止対策促進機構理事。ココロとカラダのケアラボ主宰。
企業の人事部を経て、人材紹介会社でキャリアコンサルタントとして従事。2000 年に叔母、叔父、母などの介護が次々始まり5人の介護と4人の看取りを経験。介護離職を機に独立し、現在も要介護4の母を介護しながら、働く人の「心の健康」と「キャリアや介護と仕事の両立」支援を行なっている。ウェルリンク(株)にて「介護とこころの相談室」を立ち上げ相談に従事。介護者と認知症当事者が集う場として「ここからカフェ」を毎月開催。
著書に『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』『やりがいある介護・後悔しない介護 ケアライフコンサルタントが考えるしあわせ人生のつくり方』(いずれも方丈社)がある。